私は毎朝、聖書を読み祈った後で、朝ドラ「あんぱん」を観る。やなせたかし・のぶ夫婦をモデルにしたこの番組は、「アンパンマン」を生み出すまでの生涯を描いたもので、「何のために生まれて、何をして生きるのか」を問いかけている。
やなせさんにとって、戦場の辛い体験と弟の戦死が「アンパンマン」を描く大きな原動力になった。戦地で「正義」を振りかざしていた軍隊は、やなせさんにとっては「みじめなヒーロー」に見えた。しかも、その「正義」も当てにならない。戦争が終わると昨日までの悪と正義はきれいに入れ替わった。「ヒーローとは何か。本当の正義とは一体何か」という思いが、「アンパンマン」に反映されることになった。
アンパンマンはいつも「僕の顔をお食べ」と言って、お腹が空いている子どもに自らの顔の一部をちぎって与える。その後、バイキンマンの攻撃によってピンチになることもあるが、困っている子どもに手を差し伸べることを止めなかった。その理由が、ポエムさんとの会話の中で語られる。アンパンマンが自分の顔をちぎって空腹のポエムさんに差し出した時、ポエムさんは「君は何のために生まれたの。何が君の幸せ。何をしたら喜ぶ」と聞く。アンパンマンは「僕は、お腹が空いて、困っている人を助けるために生まれてきました。だから、ひもじい人に食べてもらうことが一番嬉しいんです」と答えると、ポエムさんは「でも、そのせいで顔は欠けてしまうし、はっきり言ってかっこ悪い。それでいいの?」と問いかける。するとアンパンマンは「僕はパンだから食べられるのが幸せなんです」と答えた。これは主題歌「アンパンマンのマーチ」の「何のために生まれて、何をして生きるのか 答えられないなんて そんなのは 嫌だ!」に対する答えでもある。パンとして生まれ、人に食べてもらうために生きる、だから自分が弱くなっても、それが一番嬉しいという。
このアンパンマンの姿こそ、主の姿ではないか。「わたしは、天から降って来た生きたパンである。このパンを食べるならば、その人は永遠に生きる。」ヨハネ6:51。主は「生きた命のパン」として、十字架で自分の命を捧げ、私たちを罪から救い出し、永遠の命を与えてくださった。主は、アンパンマンのように、世界一弱いヒーローかもしれないが、その弱さのゆえに、飢えている人にパンを分け与え、生きる喜びを与えてくださった。たとえ自分自身が傷つくことがあっても、隣人を愛し仕えて行こう!ここに「何のために生まれて、何をして生きるのか」その問いに対する答えがある。