非核三原則(核兵器を作らず、持たず、持ちこませず)の表明で、今から50年前に佐藤栄作元首相がノーベル平和賞を受賞した。ところが佐藤元首相は、沖縄の1972年返還に合意した1969年の日米首脳会談の際、「重大な緊急事態」では事前協議で返還後の沖縄に核持ち込みを認めるとした密約の合意文書に署名していたことが後で発覚した。アメリカの核兵器を積んだ艦船や飛行機が日本へ自由に出入りできる仕組みが、この秘密協定によって今なお存在し、その意味で、被爆国である日本が現在でも核戦争の出撃拠点となる可能性があり、ことは重大である。
今回の日本原水爆被害者団体協議会へのノーベル平和賞の受賞で、新聞各社の社説の中で、最も厳しく日本政府を批判したのは、下記の沖縄『琉球新報』であろう。
「日本は世界で唯一の戦争被爆国である。政府は被爆者団体と平和の誓いを共にし、核廃絶を主導する役割を果たさなければならない。各国が立場の違いを超え、核兵器の縮小・放棄で歩み寄る橋渡しをすることだ。しかし、日本政府は核廃絶に背を向けて、安全保障政策で米国の「核の傘」への依存を強めている。
核抑止力を容認すれば必ず軍拡競争に陥る。世界は今、核兵器が使用されかねない瀬戸際にある。ロシアは核による脅しを繰り返し、北朝鮮やイランは核開発を進める。核使用に「必要悪」はない。原爆投下の地獄を知る国として、核兵器の一切を否定する立場を崩してはならない。
米統治時代、沖縄には1300発の核兵器が配備・貯蔵されていた。日米の沖縄返還交渉では、沖縄への核の再持ち込みを認める密約を交わしていた。現在、米中対立の前線として南西諸島の要塞化が進む。沖縄にとって核の存在は過去のものではなく、脅威として色濃くなっている。
核兵器の開発から使用までを全面禁止する核兵器禁止条約が2021年に発効した。この画期的な国際法に、肝心の日本が批准していない。締約国会議へのオブザーバー参加にさえ踏み出していない。
戦後80年にさしかかり、被爆者が少なくなる中で体験継承の課題もある。核廃絶をただちに行動に移すことが政府に求められる。」2024.10.12 「社説」抜粋
被爆者が望んでいるのは、核抑止でも核共有でもなく核廃絶である。私たちは、彼らの切実な声に耳を傾け、核廃絶に向けて共に声を上げ、実現を祈り求めたい。