戦争の回復できない傷痕     

毎年終戦記念日には、新聞、テレビで特集が組まれる。私は、母が大阪で空襲にあった話を刷り込まれている。大阪では、堺大空襲を含め8回にわたり大空襲が行われて、1万人以上の人が死亡している。また、父の住む神戸では、5回の神戸大空襲が行われた。母は、よく私に戦争の恐怖、惨たらしさ、悲しさ、苦しさを語る。急降下をしてきた戦闘機を操縦していた米兵のゴーグルをした若者の顔を覚えている。母は、国民学校に通っていた79年前のことを昨日のことのように、覚えているのだ。そのころの恐ろしさといったら、忘れたくても忘れることができないのだ。音、におい、感覚、色が何かのスイッチで、いつでもよみがえるらしい。

私は、ネットのある記事を見て気づいたことがある。それは、アメリカ復員兵の自殺者の数に驚いた。一日22人、1年に8000人の復員軍人が自殺をする。復員兵というのは、日本では、第2次世界大戦で帰還した兵隊を指すが、アメリカでは、アフガニスタン、イラク戦争での帰還兵を指す。そこで想像を絶する経験をして帰ってくる。その後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患う帰還兵も多いという。帰還してからの生活がうまくいかず、アルコール中毒や薬物中毒になったり、うつ病を発症したりその挙句、自殺にまで追い込まれていくのか。20年前、息子がアメリカ人のウイルという友人を連れてきた。その時、ウイルの弟がイラク戦争へ志願を出したと聞いた。私は、耳を疑った。息子は、意外と冷静で「自分たちとは考えも国も違う。」と判断していた。今目の前にいる息子の友人の弟が実際軍人として戦争に参加することには、とてつもないショックを受けたことがある。

日本では、原爆、空襲の犠牲者の話を聞くが、日本兵がアジアの人に残虐なことを行ったことを、きちんと語る人は少ない。それは、語らないのではなく、語れないのではないだろうか。

兵隊さんは、自分のしたこと、相手の受けた犠牲、自分の負った犠牲、全て人に語れない大きすぎる傷を心に背負って生きていかなければならない。戦争に行く軍人は、それが正しいことと教育をされ、信じて行う。すべて国のため、家族のため。そして、狂気に満ちた空間となる。戦争から帰った時から、現実に戻され、更に苦しみが始まる。

どこの国の人も、同じ人間。世界各国で、平和を叫びたい。もうやめよう。人を傷つけることは‼

「主は国々の争いを裁き、多くの民を戒められる。 彼らは剣を打ち直して鋤とし 槍を打ち直して鎌とする。 国は国に向かって剣を上げず もはや戦うことを学ばない。」イザヤ書2:4