神は人を分け隔てなさらない

「婚姻状態にある女性は無能力者」という言葉に思わず「はて?」と声を上げていた連続テレビ小説『虎に翼』の主人公・猪爪寅子に毎日引き込まれて観ている。女性は女学校を出たら結婚し、子どもを産み、家庭を守るのが当然といった当時の風潮が見事に描かれているが、今の時代も政治家の発言など聞いていると、思わず「はて?」と声を上げたくなる。一度は妊娠・出産で法曹界から身を引いた寅子が、再び法曹界へと一歩を踏み出すきっかけとなったのが、新たに公布された日本国憲法であり、第14条「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」であった。

この日本国憲法に「男女平等」を加えることに力を注いだのが、当時まだ22歳のウクライナ系米国人女性ベアテ・シロタ・ゴードンだった。父親はウクライナのキーウ出身で有名なピアニストだったが、ナチスによるユダヤ人排斥が進むヨーロッパから亡命するために、1929年山田耕作の招きを受けて、東京藝術大学に就任したことで一家は日本に移住。ベアテも5歳から10年間、東京で過ごす。ベアテは1939年、アメリカの大学に入学。世界では、ドイツのポーランド侵攻が始まり、第二次世界大戦が始まった年でもあった。敗戦後1945年12月、ベアテは日本に戻り、軽井沢に疎開していた両親と再会。日本語に堪能なベアテは、日本国憲法草案作成チームに指名され、日本国憲法に女性と家庭の法律の草案の担当となった。

ユダヤ人はナチス勢力拡大によりヨーロッパから排除され、大虐殺に遭い、そのような最悪な人権侵害を受けた民族であり、又、ウクライナ人の子であったベアテが、日本の中で権利をもたなかった女性に対して権利を与えてくれたことは、ベアテ自身の生い立ちや戦争に翻弄され続けた歴史が背景にあるのではないかと思う。

私たちに与えられた「男女平等」という人権には、まだまだ課題は残っている。2023年の日本のジェンダーギャップ指数は、146ヶ国中125位で、G7の中で最下位を更新し続けている。女性に関する環境や雰囲気は変わらない部分がまだまだ多くある。教会の中にも女性の牧師への招聘が後回しにされたり、女性への役割分担などが残っている。「神は人を分け隔てなさらないことが、よく分かりました。」使徒言行録10:34。神は性別で分け隔てせず、私たちに仕え合うようにと招いておられる。人が人であることの権利が尊重され、活躍できる教会を、又、社会を作っていきたい。