「恵み」を知る                 

今、人間にとって喫緊の課題は何だろうか、と考えたときに、ペトロの手紙一4章10節は大きなヒントを与えてくれます。それは、「神のさまざまな恵み」の「善い管理者として」という言葉です。恵みの善い管理者となるために、授かった賜物を生かして互いに仕えよ、とあります。「恵み」とは何か。昔、私が本を買ってくると、母が「広志、知識は人を高ぶらせるよ。『知識』を積むより、『知恵』を大切にしなさい。『知恵』というのは、恵みを知ること。」と諭されました。当時は、どうせ母のことだから教会の配布物か聖書からの受け売りだろうと思い、「ふ〜ん」と聞き流していました。今にして思うと、受け売りであったとしても、大切なことを言っていたんだなと、今更ながら思います。

 「恵み」とは、「人それぞれに授かった賜物」もありますが、人が生きる上で必要な空気・土・水・日の光・緑などがあって、生き物が快適に住める地球環境のバランスが保たれています。そういった「人に与えられた恵み」に感謝し、善い管理者として生きることを教えているのではないでしょうか。

しかし今、そのバランスが大きく崩れつつあり、地球が悲鳴を上げています。スウェーデンの環境学者ロックストローム氏は、「気温が『+1.5℃』を超えてさらに上昇して、『+2℃』に近づいたとき、地球のシステムが臨界点を超えてしまい、たとえ人類がそのあとで温室効果ガスの排出をゼロにしたとしても、温暖化が止まらなくなる。最終的に、『+4℃』に達する可能性がある。」と言っています。(ちなみにSDGsのベースになったのは、ロックストローム氏がネイチャーに発表した論文だそうです。)たしかに、「地球規模」の「100年単位の長期的な変化」を自分の問題としてとらえることは難しいことだと思います。しかし身近に暮らす子や孫たちが大人になったときに、「神のさまざまな恵み」を享受できるように、今を生きる人たちが「善い管理者」となることが求められているのではないか。

「土」が地球に現れて約5億年だそうです。土がなければ地球上に生物は現れなかった。聖書には、「主なる神は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。」創世記2章7節とあります。またギリシャ神話には、「私達は腐食からできている」という言葉があるそうです。そして人間が摂取している食べ物の99.7%は土から育ったものだそうです。

もう考えている猶予はないのですが、もう一度自分が住む地球から与えられる「恵み」について考えてみたい。「恵み」とは、他国に比べて秀でることなのか、経済規模が大きくなることなのか。それとも、「神のさまざまな恵み」に感謝して「善い管理者」として生きることなのか。どちらの方向を向くかで、地球(環境)と人間も含めた生き物の関係が決まるのではないでしょうか。