戦後79年

日本は今年で戦後79年を迎えようとしています。私が子どもの頃は、戦争体験をした方がまだ周りに多くいましたので、学校や教会でも当事者から戦争の恐ろしさを聴く機会がよくありました。「戦争」と聞くと、自分とは無関係、過去のこと、と思ってしまいがちですが、あの過酷な時代の犠牲になった方たち、また、生き抜いて日本の発展に尽力してくれた方々がいるからこそ、今の私たちの生活があることを忘れてはいけないと思います。先日、「名もなき人々の戦争」というドキュメンタリーを見ました。天皇のために死ぬことが正義とされ、多くの方が理不尽に命を奪われていった現実に改めて触れ、胸が張り裂けそうでした。特に自分の娘と同じような年齢の子どもたちが、学校でマインドコントロールともいえる間違った教育を受け、戦争の一端を担わされていたことはあまりにも可哀そうでした。命だけではない、どれだけの夢や希望を戦争は奪っていったのでしょうか。

土浦にいる佐川好子さんにも当時の話を聴きました。13歳で東京大空襲に遭い、お母さんとお兄さんの位牌だけ持って一人で防空壕に逃げたと。田舎に疎開したあとも妹と弟の面倒を見ながら農家の手伝い、女学校に通い、大変ご苦労されたようです。今でも戦時中を思い出すとおっしゃっていました。佐川さんの話を聴いた後に戦時中の映像を見ると、白黒ではなく、色のついたリアルな画像として浮かび上がってきます。私のこんなに近しい人がこの戦火を生きて来られたのだと思う時、平穏な生活を、青春時代を、家族を奪った戦争をより憎く感じました。

さて、現在パリでは平和の祭典であるオリンピックが開かれて大変な盛り上がりを見せています。ただ、この晴れやかなオリンピックのニュースの中で、唖然とするような記事も見かけます。それは、選手に対しての誹謗中傷です。泣き崩れた選手への心ない言葉。メダルを取れなかった選手へのバッシング。言葉は時にナイフより切れる凶器になります。実際にこのようなネット上での誹謗中傷により命を落とす方もいます。この卑怯な攻撃の心理とは、敵を作り上げて銃を向けていった戦争の心理となにか似たような感じさえします。

平和とは一度手に入れたら永遠に続くものではありません。日々の努力が必要とされます。戦争をしない社会を築くこと。相手の尊厳を傷つけないこと。そしてすべての命は神様が与えてくださったものであると信じ、大切にすることだと思います。今日も世界から争いがなくなることを祈りたいと思います。

「悪を避け、善を行い 平和を尋ね求め、追い求めよ。」詩編34編15節