2001年9月11日―30代以上の方なら、この日付を聞けばすぐに思い出す出来事があると思います。アメリカで同時多発テロが起きた日です。イスラム過激派組織によってハイジャックされた旅客機2機がニューヨークのワールドトレードセンターに激突し、さらに1機がアメリカ国防総省(ペンタゴン)に突入しました。多くの命が奪われた、痛ましいテロでした。 私はこの悲劇が起こる約3週間前に留学のため渡米しており、英語もほとんど理解できないまま、突然国全体が異様な空気に包まれていく様子を目の当たりにしました。その日、大学では新入生歓迎イベントが予定されていましたが、すべて中止となり、キャンパス内の教会では礼拝が行われました。 「この国はどうなってしまうのだろう」。ただでさえホームシックだった私は、強い不安に押しつぶされそうでした。日本から両親が送ってくれた荷物も、テロの影響で没収され受け取れなかったことがあります。教会の前には大きな星条旗が掲げられ、愛国心を刺激するグッズが店頭に並び始めました。かつては空港のゲートまで見送りに来られたのに、テロ以降はセキュリティが厳しくなり、荷物を預ける場所までしか入れなくなりました。日常が少しずつ変わり、国が報復へ向かって進んでいく気配を感じました。 当時履修していた「旧約聖書」の授業で、私は先生に「どうしてアメリカはキリスト教国なのに戦争をするのですか?」と尋ねたことがあります。返ってきた答えはもうはっきり覚えていませんが、その時私は心の中でこう思いました。 「日本には憲法9条があって本当に良かった。“戦争をしない”と宣言している国って、なんてかっこいいんだろう。」 あの瞬間ほど、自分の国を誇らしく感じたことはありません。 人間は臆病な生きものです。だから武器を作り、買い集め、自分を必要以上に大きく見せて安心を得ようとするのだと思います。しかし、相手を殺すための道具で、本当の“安心”が得られるのでしょうか。私はこれまで戦争体験者の方々から、「戦争をして本当に良かった」という言葉を聞いたことがありません。皆さん、どれほど辛かったか、どれほど苦しかったかを語られます。今年で敗戦から81年。祖父母、そしてその上の世代の方々が経験した死や苦しみを、私たちは忘れてはいけないし、軽んじてもいけないと思います。 あの日、私が感じた「戦争をしない国ってかっこいい」という思いを、次の世代へ、さらにその次の世代へと、永遠に受け継いでいってほしいと願っています。 「平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる。」マタイ5:9
大切な命 戦争しない
週報巻頭言
